焙煎とマーケティングの実際 5

「商圏の壁」

 「商圏」についての話が続きますが今回で一区切りにします。
 駅前商店街や住宅地の豆売り店に多いケースですが、開店してチラシやポスティングをして、その後地道にお客様を増やします。200キロ売り、300キロ売り順調に伸びた頃近所に新しい豆売り店ができます。多いところでは一駅に3店4店とあるそうです。チラシを撒いたり、セールをしても費用対効果が悪くなり経費がかかるばかりで損だと思い始めます。(チラシ、DM、ポスティング等やり方ひとつで何倍もの差がでます)

 かといって何もしないと頭打ちかジリ貧になります。そのまま低空飛行の商いで満足するか、支店をだすか。
支店を出すと家賃、人件費がかかり管理にエネルギーがいるわりに利益がでません。その上、オーナーがいないと豆売り店は不思議とお客様が増えません。オーナーのコーヒーに対する情熱、売る気が売上に直結します。(お客様はコーヒーだけでなく、その店主の情熱や情報も購入しているのです)
優秀な人材に恵まれたら、その人は独立しないと意味がありません。常に人材に苦労します。支店経営は個人店レベルでは勧められません。

 そして、豆売り店のメリットは生産性を上げられる点にもあります。
5キロ釜で1キロ焙煎するも5キロ焙煎するも同じ手間です。
テーブルサービスの喫茶店と違い販売店は店の広さに関係無く売上を伸ばせます。満卓はありません。

 10年ほど前に豆の相場が安く、豆売り店も少なかった頃開店しそこそこの生豆を使い、400円以上の価格で販売していた店から5年ほど前からの相場の高騰と競合店の出現に「豆売り店の時代はもう終わりだ」という声が聞かれました。
換言すると「豆売りで気楽に儲かる時代は終わった」になります。これからがマーケットがひろがり、面白い時代になると思っていた私は驚きました。これからはお客様の成熟とともに自家焙煎であっても伸びる店と落ちる店とはっきり分れるでしょう。
すでに不景気のなか伸び続ける店と昨対で割っている店とでています。

 現実には小商圏で競合店も無いまま、価格、品揃え、利便性、品質、情報、等々お客様にとってのお値打ちを真剣に考えずにきた店は300キロ/月位の販売量で「商圏の壁」にぶち当たります。
豆売り店の経営は300キロからが商売らしくなります。
それまでは準備段階で収入も少なく我慢の毎日が続きます。そんな300キロで頭打ちになったらなんの面白みも無い商売になります。
趣味の範囲を超えなくて良いのかもしれませんが、生豆の質も上げられないし、価格も下げられず、利便性も改善できないのでお客様にとってもあまりメリットの無い店になります。

 何故「壁」があるのか?
お客様が来店してくださる範囲に限界があるということです。そこへ競合店が増加します。
自家焙煎店だけでなく、デパート、スーパー、通販等魅力的なレギュラーコーヒーマーケットを狙っています。
「壁」があったら破ればいいのです。破る方法はいろいろあります。
小商圏の中で徹底してお客様を堀下げたり、目的来店性を高めて  商圏をひろげたり、、、。
基本はお客様にどこまで支持されるか、必要な店になれるかです。当店の具体的な方法をこのページで徐々に公開します。勿論店毎に条件が違いますので、他の良い方法も多くあります。
(注)開店して3年5年しても100キロ200キロレベルの店は基本的にどこかお客様の求めるものとズレがあります。焙煎して販売しているコーヒーはお客様が飲むものです。店主が飲むものなら自己満足でも結構ですが、お客様がお金を払い飲むものですから自店のお客様と将来お客様になる方の満足を最優先することです。別に迎合になる心配はいりません。

次回から焙煎について何回かお話します。

 
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