焙煎とマーケティングの実際 2

「喫茶店と豆売り店」

 同じコーヒーを扱っていながら、喫茶店と豆売り店は全く違う商売です。
 私は以前「紅茶の店 テ・カーマリー」を約10年間営業していました。喫茶店というテーブルサービス業のつらい面から話しを始めます。
家賃と人件費が大きな負担になります。当時で20万円近くの家賃とアルバイト人件費が5万から10万円かかりました。今はともに無しです。繁盛すれば家賃比率は下がりますが、人件費が上昇します。
客単価の低さが致命的になります。お客様が1時間過ごして、800円の喫茶店も3000円、5000円のレストランも家賃は同じです。
人件費も同様で、客単価の低さが人件費の低減につながりません。
内装も喫茶店だからと言って、(ローコストに造っても)4分の1、5分の1になるわけではありません。
光熱費は同じようにかかります。
開業費、営業費ともに売上に対してとても大きな負担になります。
昭和30、40年代のようにまだまだコーヒーが輸入文化の幻想に包まれていた時代は、他の物価に対して高い価格、安普請な内装でもお客様が満足してくれたのです。そして喫茶店は気楽で儲かる商売だというイメージがありました。今は陳腐な内装では、お客様のリビングに太刀打ちできません。コーヒー、ケーキ、料理にしても熱心な家庭はとても高いレベルです。
 結局喫茶店は成功して、やっと生活できる商売です。成功するケースは少ないですから普通だと失敗します。
なぜ、失敗が多いのか?経費の問題は今述べました。
別のポイントは小商圏なのにマスマーケティングの商売をしているというのが喫茶店のつらい要因だと私は結論ずけています。
逆に見ると、店さえ出来れば専門的な修行も無く、特別にマーケティングの勉強をしなくてもお客様が来てくれた商売だったのです。そのイメージの延長で今も自家焙煎という付加価値が変わっただけで気軽に素人のまま参入する人が多いのでしょう。
戦後日本の例外的な時代に許された商いだと思います。
私は豆売り店を始める時に商売の土台の考えとしたのは、手探りでなく検証のできる安定した経営をすることとしました。
 以上、喫茶店の不利な条件は、家賃、人件費、小商圏、顧客管理の出来ない大商圏商法などだと思います。

次回は小商圏商法と大商圏商法についてのお話です。

 
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