焙煎とマーケティングの実際1

「良い店と必要とされる店」

 「売上の上がらない店はお客様に必要とされていない店です」この一言に出会って私は廃業せずに今まで商売をして来られました。
 昭和60年頃、当時お世話になっていた会計事務所のセミナーの講師の先生の言葉です。これで、それまでつかえていた何かが全て氷解しました。
 その頃の私は紅茶の店を開店独立して3年くらい経ち、固定客は付いていたものの何とか店を維持できる状態で、決して順調とは云えませんでした。毎日一杯一杯に集中して手抜き無くお客様に美味しい紅茶を出していました。お菓子もオリジナルケーキを色々と試作して好評を得て100人足らずの客数で1日平均40から50ケ売ってました。勿論、テークアウトも順調でした。 スコーンは12時に焼きあがるようオーブンに入れ、お昼に来る女性のお客様は焼きたてのスコーンとポットサービスの紅茶、手ずくりのお菓子で過ごしていました。それで7〜800円位です。
ミントは10種類位育ててその中から、アイスミントティーにはクールミントが、ホットのミントティーにはスペアーミントが気に入り使い分けていました。なんと気合が入っていたことでしょう。自分の味を出したい、こんな味を飲ませたい。全てがそんな感じです。
しかし、振り返ると傲慢な若さばかりが気になります。確かに質の高い商品をだしていたかもしれませんが、一定の固定客の方々以外はお客様は増えませんでした。遠くからもみえましたが、見学にくるだけでお茶をしに遠くからそう度々は来ません。
どこかに、美味しい紅茶はこう云うものだ、俺が教えてあげる。そんな気持ちがありました。

そこへはじめの言葉です。
「売上の上がらない店はお客様に必要とされていない店です」

お客様は自分にとって必要な店でしかお金は使いません。確かに「良いお店ね」「こんなお店がほしかったの」そんなお褒めはたくさん頂きました。しかし、そのようなお客様はそんな店を知っていれば満足です。お友達に話題が出せれば良いのです。しかし、お店側は来店していただかないと1円にもなりません。

つまりお客様にとって必要無い店だったのです。

それから、お客様にとって必要なお店になるには、お客様にとって良いお店とは、自分に出来ることは何か考え始めました。
当店に相談にみえる方によく言います。コーヒーはお客様が飲むものです。今、目の前に焙いてある30キロのコーヒーを自分で全部飲むのなら自分の為に焙きなさい。自分で1日に10杯飲んでもたった100グラムしか飲めません。1日10キロ売る店は約1000杯、20キロ売れば2000杯のその店のコーヒーが毎日飲まれています。わずか3坪の小さな店のコーヒーが毎日1000杯以上日本のどこかで飲まれているのはとても充実感があります。
 次回は喫茶店と豆売り店についてのお話です。

 
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